*****愛してる。が言えなくて*****

―――――――蒼弥!

聞きなれた、女子にしては少し低めで
でも、すごく心地の良い声で俺の名前を呼ぶのは、彼女の紗英だ。

「どーした?紗英。」

いつも、笑顔が可愛い紗英なのに、
今日は何故か、何かを考えているかのような、複雑な表情をしている。

「あのさ、蒼弥、今日放課後話せる?」

「おぅ。」

「じゃあ、ここの教室でね」

「わかった。」

―――――――――別れ話だろうか?
嫌な考えが頭をよぎる。

そういえば今までに、俺から紗英に「好き」と言ったのは何回だろう。

よく考えてみると、いつも紗英からだった。
「好き」も「愛してる」も。

俺は、なんか気恥ずかしくて、
なかなか素直になれなかった。

いつも、軽く流してた。