小さな天使の魔法の言葉ーあなたに贈るラストプレゼントー

『お母さーん、私ちょっとガソリン入れてくるから、琴美見ててねー?』


『はいはい、琴美、ママに行ってらっしゃいは?』


『いっちゃい!』


毎朝耕平をお見送りする時に行ってらっしゃいの練習をしているから、やっと少し言えるようになったのよね。

琴美は、行ってらっしゃいと言ったものの、一緒に行きたいと「だっこ!だっこ!」っと言っている。


『すぐに帰ってくるから待っててね?』


琴美を連れてガソリンを入れに行くと、私が外に出たら必ず泣く。

理由はそれもあるけど、少しの間とは言え私が外に出ている間に、琴美が連れ去られたりしたら恐いでしょ?

考えすぎかもしれないけど、ないとは言えないもんね。


『じゃあ、行ってきます!』


私は、悲しそうに泣く琴美のほっぺをツンツンとして、玄関の扉を閉めた。

さっさと行って帰ってこよう。

後でボール遊びいっぱいしようね?もうすぐお昼だし、何おいしい物食べようか?

そんな事を考えながら、エンジンをつけ車を走らせた。

いたって普通の毎日、ほのぼのとした日常。

残酷なニュースは毎日流れているけど、どこか他人事だった。

まさか自分が、あんな目にあうなんて……

二度と琴美を抱きしめる事が出来ないなんて、この時の私は、知るよしもなかった。