『奥様の体力が限界に近いので、陣痛促進剤の準備を始めますね。』
意識が遠のいていきそうな中、助産師さんが耕平にそう説明していた。
『お、お願いします!』
耕平は、だんだんと弱々しくなっていく私を見ては「大丈夫、もう少しだ!」と言って声をかけてくれている。
『うん……でももう……』
頑張れない、気持ちはそう思っていた。
だけど、口に出してもし赤ちゃんが聞いていたら……
そう思うと口には出来なかった。
私が、ママが諦めてどうするの!
私は、この子のママなんだから!
陣痛促進剤の点滴を始めると同時に、また強い陣痛の痛みが戻ってくる。
絶対に……産むよ!
絶対に、諦めない!!
私は…………ママなんだから!!
『オギャー……オギャー!!』
産ま……れた……
『おめでとうございます、元気な女の子ですよ!』
私の胸元で安心したような顔をしている、小さな赤ちゃん。
目を開けたパッチリ二重のその顔は、耕平にそっくりだった。
先生が後の処理をしながら、陣痛促進剤がきく前に出ちゃったねーなんて言っていた。
切られたり裂けたりで、縫うのにも時間がかかっていたけど、そっちの痛みは麻痺して感じなかった。
ただ、目の前のこの子が可愛くて、愛おしくて……
『耕平?……泣いてるの?』
『当たり前だ、泣かない方がおかしい!』
『もう……赤ちゃん見てるよ?ほら、笑って?』
『……真子、ありがとう。』
『うん。』
命がけの出産は無事終わり、それからは眠れない日々が続いた。
泣いてはおっぱい、泣いてはおっぱい、その繰り返し。
産まれる前のあの昼寝の時間は、もしかしたら赤ちゃんからのプレゼントだったのかもしれないね?
産まれたら寝る暇ないよ?だから今はゆっくり寝てね?
ってね?
