ほら?
もう……ほーら?
私は何度も耕平の頬をつまみ、ようやく耕平の顔から笑顔がこぼれた。
『真子、痛すぎ!』
『あっ、ゴメン!力の加減が難しくて!』
夢中につねったり引っ張ったせいか、耕平の頬は少し赤くなっていた。
『分かったよ、俺もう真子の所に行きたいなんて言わない。琴美としっかり、生きていくよ!』
耕平の顔に笑顔が戻る。
生きていこうと決めた耕平の顔は、強く凛々しいパパの顔になっていた。
『よかった、これで一安心……』
そう口にした瞬間、私の体が白く光り始めた。
『真子、光ってるぞ?どうしたんだよ?』
耕平が生きる気力を取り戻した。
笑顔になって、前を向いて歩き出した。
それは、サヨナラの時なんだ……
『琴美?パパとお風呂の時間だよ!』
『やったー!』
琴美は耕平の手を引っ張り、私に手を振っている。
『バイバーイ!』
『バイバイ、琴美。』
耕平はまた悲しそうな顔をして、私を見ている。
『耕平、手離してね?』
『離したら……いなくなるんじゃないのか?』
『成仏するだけだよ。』
『それって消えるって事だろ?』
『…………耕平、成仏したって私はずっとそばにいるよ。ずっと耕平と琴美を、見守ってるから!だから、早くお風呂に入ってきて……琴美の前で消える訳にはいかないでしょ?』
ずっとそばにいたママが目の前で消えたら、小さな琴美はきっと混乱して泣き続けるだろう。
だったら今は、ママは少しだけお出かけしたんだと、そう思ってもらうしかない。
『真子……』
『大丈夫!耕平の事、助けてくれる人はいっぱいいるよ!耕平は、一人じゃない!』
『…………』
私は、黙り込む耕平に、そっとキスをした。
『じゃあね、耕平!行ってきます!』
『うん、行ってらっしゃい。』
私達は手をゆっくり離し、耕平からは私が見えなくなった。
お風呂場まで耕平の手を引っ張りながら歩く琴美は、まだ私に手を振っている。
バイバイ、琴美。
バイバイ、耕平。
私の人生は、最高に幸せでした。
