本当はそんな言葉、今覚える必要はない。

もっと大事な、おやすみなさいとかありがとうとか、そういう言葉の練習の方が大事なのは分かってる。

だけどパパの為に……

耕平への最後の言葉を、代わりに伝えて欲しいの。

もし成仏出来ても、生まれ変われたり守護霊になれるとは限らない。

お父さんは、真子は悪い事はしていないから大丈夫って言ってたけど、親よりも先に子供が死ぬなんて十分悪い事でしょ?

もうここに、帰ってこられるとは限らない。

だから……

私からの最後の言葉を、ラストプレゼントをあなたに届けたいんだ。

琴美は、私の厳しい特訓に疲れて寝てしまった。


『琴美?寝ちゃったのか。』


耕平は琴美を抱きかかえて、静かにベッドに寝かせた。


『琴美は……ママがいなくても寂しくないのか?それとも本当に、ママが見えてるからいつもと変わらないのか?』


いつもと変わらない訳じゃないんだよ。

琴美も、ママだけど何か違うって事だけは分かってる。

だって、手も繋げない、抱っこもしてくれない、ただそこにいるだけのママ。

時々歯がゆくなって、何度も透ける私を通り越し、床や壁を叩いていた。

私だってこの手で、抱きかかえてあげられるならそうしたいよ。

近くにいるのに触れられないもどかしさ。

何もしてあげられないのが本当に、辛くて悲しかった。