俺じゃない方が

「あのな……。
俺は今の家に帰りたいんだ! 東京の家に!
俺の家に帰りたいんだ!!」


そうだ。帰りたい家はここじゃない。


「そんな……せっかく帰って来たんだし、泊まっていけば…」


「泊まる必要ないだろ。ばあちゃんは倒れてないし、元気なんだから」


「そうだけど……」


「早くしろ! 今出ないと最終のバスに間に合わない」


ガシッ。


俺はチカの腕を掴む。


「行くぞ…」


「待って! せめて、顔だけでも見せていったら? シノおばあちゃんが会いたがってるっていうのは本当なはずだもの。だから叔母さんが嘘をついてまで帰って来させようと…」