あら、涼君。

生徒会室の窓から野球部が練習してるのが見える。

涼君がノックを受けてる。

――



野球をやってる時はあの優しい顔じゃなく当たり前だけど真剣な顔だな。

「何を見てるの?」

「うん?」

「野球部の練習?」

「……」

「凛」

「うん?」

「気を付けた方がいいわよ」

「えっ?」

親友で書記の千恵(片桐千恵)が悪戯っぽく笑いながら

「藤倉涼介君」

「藤倉君?」

「うん。昨日一緒にいたでしょ、藤倉君と尾崎君と」

「あ、うん」

「それに今日の昼休みにも藤倉君といたでしょ?」

「……」

何で千恵が知ってんのよ。

千恵とはクラスが違うのに。

「噂になってんの」

「噂?」

「昨日といい今日といい藤倉君と一緒にいるから」

「はぁ?」

「凛、貴女ね自覚が無さすぎ」

「自覚?」

「そ、貴女はミス青葉なのよ」

「ミス青葉?何、それ」

千恵が『はぁ~』と溜め息を溢し

「ホントに無頓着なんだから。い~い、よく聞きなさい」

何か凄い迫力なんですけど。

「凛、貴女は我が青葉高校のマドンナなの。男子は勿論女子にも憧れられてる存在なの」

「千恵、起きてる?それともどっかで頭打った?」

「ち、ちょ~凛、貴女ね失礼じゃない?」

千恵に掴みかかられてるし。

「だ、だって千恵がわけの分からないことを言ってるから」

「何処がわけ分からないのよ?」

「全部」

「はぁ~無自覚な子はこれだから困るのよ」

再び溜め息をついて…

ニヤッと笑い

「ま、そこが凛のいいとこなんだけどね」

「……」