「陽菜ちゃん!!」
いきなり水島先輩の大声が。
慌てて側に行き耳を澄ますと
『ちょっと!開けてよ』
微かに陽菜の声が。
『煩い!静かにしろ』
アイツの怒鳴り声も。
『あんたほんとに馬鹿じゃない?静かにしろって言われてする馬鹿いないわよ』
陽菜…
お前は状況が分かってるのか?
『ちょっと、ほんとに出してよ。トイレに行きたいんだから』
『トイレ?』
『そうよ、ずっと我慢してんだからね。トイレに行かせてくれな いならこの部屋でしてやるから。ここあんたの部屋でしょ?汚していいならベッドにしてやる』
『ち、ちょっと待て!凛、また後から掛ける』
携帯が切れて
「先輩、陽菜はアイツの家だ」
陽菜はたぶんアイツが先輩に電話をしているのをドア越しに聞いたんだろ。
だからわざと怒鳴ってあんなことを。
「そうね。そして陽菜ちゃんを連れ去ったのは」
「誰かに頼んじゃなくアイツが」
「えぇ。雅巳はテニス特待で東高に入ったから独り暮らしだし。確か住所…あ、とっくに消去してた。場所が分からない」
先輩はアイツの家には行ったことがないのか。
こんな時だが、ほっとしている俺がいる。



