重なり合う、ふたつの傷



今は天野くんの笑顔のために頑張ろう。


『THE煮込みハンバーグ』

ボウルにひき肉と炒めた玉ねぎ、卵、パン粉、ナツメグ、塩、胡椒を入れ、粘りが出るまでよく混ぜる。


手に油をつけて、それを小判型に丸めて両手でキャッチボールみたいに空気を抜いたら、フライパンで両面に焦げ目がつくまで焼く。


そこに、水、料理酒、ケチャップ、ソースを入れて煮込むこと二十分。


その間におにぎりを作る。


天野くんのお母さんは料理が得意。

このキッチンを見ればそれがわかる。

お皿もきれいに重ねてあるし、フライパンやお鍋もきちんと収納されている。

調味料も手の届きやすい所に並べてあるし、瓶やボトルもきれい。

動きやすいし、取りやすい。

うちとは違う。


「梨織、まだ?」


天野くんがリビングから、こっちを眺めている。


「まだ。おいしいものには時間がかかるの」


「腹へったー」


「もうちょっとだから待ってて」


子供とお母さんみたいな会話をしながら、チクタク、チクタク、二十分が経過。