重なり合う、ふたつの傷



バスが来るまでなんとなく時を過ごした。

ただなんとなく。

二人の距離はこんなに近いのに、近いからこそ、なにを話したらいいのかわからなくて。


やっとバスが来て渋滞に巻き込まれる事もなく横浜駅へ。今朝、コインロッカーに預けたボストンバッグを出した。

それを「貸して」と、天野くんが持ってくれた。


「重くない?」


「平気だよ」


「ありがとう」


東海道線で川崎駅に着いて、そこから、あの赤い電車に乗った。


並んで座る私と天野くん。


何故だろう。


こんなに緊張しているのになんだか安心してる。


これって天野くん効果なのだろうか。


「梨織、着いたぞ」


そう体を揺らされて私は目を開けた。


『はっ』


眠ってしまっていたのだ。しかも熟睡。


「昨日、俺の部屋じゃ眠れなかった?」


「ううん、そんな事ない。ちゃんと眠れたよ」


「ならいいけど。なんかあったら夜中でもいいから言えよな」


「うん、わかった」


こんなに優しくされたらますます好きになっちゃうよ。どうしよう。


「ほら、降りんぞ」


「はいっ」


駅を出て、少し歩いて、二人でスーパーへ。