席に着き、机に教科書を入れようとすると、なにかが手に触れた。
ひんやり冷たくて小さなもの。
それは鍵だった。
謎解きの暗号みたい。
それが意味するものを確かめるように天野くんを見ると、頷いた。
天野くんの家の鍵だ。
私はその鍵を大切に右ポケットに入れた。
新婚さん気分。ううん、同棲気分。ちょっといけない事をしているような、だけど幸せな、そんな気持ち。
授業なんていうのはもう頭になくて。
早く天野くんのうちに帰りたい、ってそればかりが私の鼓動を加速させていた。
やっと、今日のラスト、英語の授業までたどり着いた。
そうだ、夕ご飯の買い物しなくちゃ。
今夜は鮭とツナマヨのおにぎりと、後、なんにしよう。
うーん、なにがいいかな。
明後日はカレーとかシチューとか肉じゃがとか、そういうのだから……。
ひらめいた!! 今夜はハンバーグ。おにぎりとハンバーグにしよう。


