重なり合う、ふたつの傷



二人が外泊している間なら私が外泊しても気づかれる事もない。


『友達のうちに泊まる』なんて、わざとらしい嘘をつかなくてすむ。


なんだ、話は非常事態で絡まっているのに、するりと簡単にほどけた。


「出張ってどのくらい?」


「二週間。ひとりでも平気だよな、梨織」


「うんうん、全然平気。ひとりで平気」


「お金はリビングの引き出しに入ってるから、食費はそれを使いなさい。後、お母さんから連絡がきたら電話してくれ」


「わかった。行ってらっしゃい」


「行ってきます」


私はお父さんをいい子のふりで見送った後、制服に着替え、数日分の服や下着、教科書、日用品をボストンバッグに詰め込んだ。



この家はこれから数日間、空っぽになる。

再び三人が戻ってきた時、この空っぽの家はどうやって私たち三人を迎え入れてくれるのだろうか。