重なり合う、ふたつの傷



すやすやと寝息を立てている天野くん。


かっこいい。


かっこいいから好きになるわけじゃない。かっこいいだけで好きになったりしない。


天野くんと私はどこか似ているような、どこか繋がっているような、そんな気がしていた。


だから好きになったんだと思う。


ねえ、どんな夢を見てるの?


私もそこへ一緒に行きたい。


真っ白な世界でも真っ黒な世界でも、覗いてみたい。天野くんの無防備な夢の世界を。


このままずっとその寝顔を朝まで見ていたかったけど、もし天野くんの目が覚めて私と視線が合った時の事を考えると、恥ずかしくて。部屋を出るしかなかった。



「こっちね」


階段から見て左側のドアを開ける。


そこは天野くんの部屋。


モノクロで統一されていて、私の部屋よりも繊細で綺麗。



「へぇー、天野くん、野球好きなんだ」


本棚に並んだ野球の漫画。


それを見て、お父さんの顔が頭に浮かんだ。


お父さんも野球が好きで、この漫画が好き。私が男の子だったら一緒にキャッチボールをしたかったらしい。


天野くんもお父さんになったらキャッチボールとかしたいと思うのかな。


そう思いながらベッドに寝転がり、水色のタオルケットをかけると天野くんの匂いがした。


あのリンスの匂い。


そっか、私の髪も今、それと同じなんだ。


ずっと同じでいたい。



そう願いながら、うとうとと夢の中へ。タオルケットの肌触りが私を心地よく包んでいた。