重なり合う、ふたつの傷



疲れた時は天野くんの『頑張れ』の言葉を繰り返すように思い出した。


お父さんは毎日こんなふうにして自分の時間をお金に代えてくれていたんだ。


賃貸のマンションだって何不自由なく暮らしていける事をすごくありがたいと思った。


それから、コンビニにはおにぎりを温めるという文化があると知った。

確かに温めたらおいしいのかもしれない。

でも私はそのまま食べたい。


土日の昼間、ルミと遊ぼうと思えば遊べたし、天野くんとデートするならできた。

でも、なんとなく疲れちゃって私からは誘わなくなっていた。

ルミはたまに誘ってくれたから、クレープを食べに行ったり、カラオケに行ったり、学校から帰る時も一緒だったけど、天野くんはなかなか誘ってくれなかった。

きっと気を使ってくれているんだと思った。

忙しくても疲れていてもいいから天野くんに誘ってほしかった。


ちょっと強引なくらいがいいと声には出さずに求めていた。