耳にあてる受話器からは、プルルルという電子音が鳴り続ける。
隣には監視するかのようににいさんがあたしを見ていて、それすらももうどうでもよくなってきていた。
電子音はプツリと切れ、代わりに聞こえてきたのは無機質な女の人の声。
《ただいま、留守にしております。》
留守電になってくれて、どこかホッとしているような自分。
もし智紀が出てしまったら、にいさんの言いつけを守れずにすがってしまいそうだったから……。
女の人の声が終わり、最後に《ピー》という電子音が鳴った。
「智紀……。あたし、家に帰ったよ。
もう大丈夫だから……。
今までありがとね。バイバイ」
それだけ伝えて、電話を切った。
「よくできました」
電話を切ったあたしに、にいさんは満足そうに笑って携帯を受け取った。
ああ、どうしてだろう……。
何も変わってないはずなのに、映る世界が白黒に見える。
「じゃあ、ご褒美あげないとね」
「な、に……?」
「今まで猶予期間あげたんだから、今日は覚悟しときなよ」
「な……い、や……嫌だあっ……!!」
白黒になったはずなのに
触れてくるにいさんには吐き気がするほど嫌悪感が生まれてきて、
力いっぱい抵抗するあたしに、パンという音が響いた。
同時に感じるのは、頬に弾けた痛み。
「うるさいよ。
玩具は玩具らしく、おとなしく俺に従っておけ」
「……」
そうだ……。
あたしは玩具……。
愛玩人形。
「そう。いい子だ」
あたしが生きる術は
この人を満足させることのみ。

