ノラ猫

 
この辺りにしては、不釣り合いの高級車。

どこか嫌な予感はしたけど、その横を通らないとマンションへは入れない。


大丈夫。
何かあれば叫べばいいだけ。

嫌な予感で速まる鼓動を落ち着かせ、足早でその横を通り過ぎようとした。


だけどあたしが横を通った瞬間、待っていたかのように窓が開いた。



「久しぶりだな。凛」

「え?………あ…」



かけられた言葉に振り返って、思わず持っている荷物を落としそうになった。


車越しの相手。
鋭い眼光は以前と変わらない。



「………おじ、さん…」



それは、あたしを引き取った神楽坂のおじさんだった。


事実上、あたしの義父に当たる。
だけどまったくもって、ただの他人だ。


「どう、して……」
「悟から、凛がこの辺りにいると聞いてな」


にいさんが、再びあたしの目の前に現れることは予感してた。
だけどまさか、おじさんのほうが出向いてくるとは思っていなかった。


だっておじさんは、あの家では全くあたしには無感心だったから……。