ノラ猫

 
「あ、そうだ」


玄関まで見送っていると、何かを思い出したかのように鞄を漁りだした。

その光景を、ただ黙って見つめている。


「凛、手出して」
「え?」
「いいから」


意図が掴めないまま、言われた通り手を差し出した。

右手を出したけど、「やっぱこっち」と言われて、左手を取られる。


そして手を離されたと思うと、



「……鈴?」



あたしの手首には、金色の小さな丸い鈴がつけられていた。


「昨日雑貨屋で見つけてな。
 凛に似合うと思って」

「……」


それは、おそらく手首につけるというよりは、ヘアゴムとして使うもの。
黒いヘアゴムに、金色の小さな鈴がついているデザイン。


「これをつけてれば、凛がどこにいるか分かると思って」


そう言って、智紀はあたしの手首を掴んで揺らした。

それと同時に、小さな鈴からはリンリンと可愛らしい音が奏でる。


「……猫じゃないんだから」
「似たようなもんだろ」


皮肉な文句を言えば、それを肯定されてしまった。