難しすぎる感情に、ただ黙って好きの意味を考えた。
たぶん、智紀のことは、今この地球上にいる人間の中では一番好き。
だけど今聞いてる、智紀の「好き」という感情はそういった意味じゃない気がする……。
「……」
「はぁ……。いーよ。そんな眉間に皺寄せんな」
「え?」
ひたすら考え続けるあたしに、智紀が呆れたようにため息を吐いた。
寄ってしまった眉間を、ツンと突いてくる。
「ごめん。よく分かんない」
「だろうな」
男と女の、いわゆる恋愛感情というものを聞いているんだということは分かってる。
けど……
この世に愛というものが存在するなんて思えない。
今までずっとそう言って生きてきたから……。
「それが分かるまでは、俺も抑えねぇとな」
「何を?」
「こっちの話」
苦しそうに、自分をなんか抑えてる。
言葉足らずにその意味に、あたしは首をかしげるのみ。
「とりあえず、食うか」
「あ……うん」
諦めたのか、智紀は前を向き直って、再び箸に手を伸ばした。
テーブルに並べられた料理からは、もうどれも湯気は立っていない。
「冷めちゃったね」
「悪い」
「いーよ。また今度作るから」
「マジ?」
「……気が向いたら」
「ありがと」
当たり前すぎる日常会話は、まだまだあたしにはくすぐったい。
だけど心が、妙に温かくなっていることだけは分かった。

