「凛の笑顔、早く見せて」
「…無理」
「いや、絶対に笑わせるし」
「………無理」
なんだか、素直にうなずけなくなる。
でも多分、この「無理」は、本心で感じているものではなくて、きっと意地から出た言葉。
智紀となら、いつか本当に、声を出して笑う日が来るんじゃないかって思えた。
ブーブー……
その時、棚の上に置いてあった携帯が震えた。
智紀の携帯に、着信がかかってきたらしい。
「ちょっといいか」
「うん」
一言断って、その場で出る電話。
女の人だろうか……。
そんな疑問が勝手に浮かんできたのには、ちょっとだけ自分に驚いた。
だけど、隣の携帯から漏れてきた声が、男の人だと分かる。
「ん?ああ、そう。……マジ!?」
電話で話す智紀の声は、あたしに話す言葉とはちょっとだけ違う。
砕けて、明るくて、相手の人と仲がいいんだとすぐに分かった。
あたしは隣で、ちまちまとサラダを頬張る。
ご飯冷めちゃうな……。
ハンバーグは冷めたらおいしくないのに……。
スープももう一回温め直そうか…。
一向に切れない電話に、なんだかだんだんつまらないといった感情が芽生えてきていた。

