ノラ猫

 
「……そう」


思わず返した言葉は、無表情でそっけない返事。

本当は、反応が気になって、心臓がどきどきしてるくせに。


「お前、今照れてるだろ」
「そんなことない」
「嘘だ。耳が赤くなってる」
「え……」


咄嗟に、耳を両手で覆った。

ポーカーフェイスには自信がある。
だけど耳に浮かびあがる体温調節までは出来ない。

智紀は、両手で耳を覆うあたしを、面白そうに見ていて……


「そういうとこ、もっと見せろよ」
「……」


訳の分からない、催促までしてきた。


「意味わかんないよ」
「取り乱した姿。人間っぽい」
「……」
「感情はもっと露わにしておけ」


それを言われて、やっぱり困った。



感情を押し殺すことに慣れ過ぎて
うまく笑顔すら作れなくなった。

嬉しいと感じても微笑みを浮かべられなくて
楽しいと感じても声を出して笑えない。

悲しくても顔は歪まないし
寂しくても涙が出ない。


それがあたしに求められるものだったから……。