何が起きたか理解するころには、目の前には智紀の顔があった。

音の原因は、智紀があたしのすぐ横の壁を殴った音らしい。


「な、に……」
「じゃあ、俺の相手でもしたら?」
「何言って……」
「どうせ他の男に抱かれに行くんだろ?
 それなら俺んとこでいいじゃん」
「っ……」


そう言って、智紀は乱暴にあたしの体を寝室へと引きずっていった。


「ガ、キには興味ないって言ったじゃんっ……」
「ああ。けど、二日間見てたら、意外にイイカラダしてると思って」
「さい、ていっ……」


まさか、そんな視点で見られているとは思わなかった。


勘違いしてたんだ。
何も手を出してこない智紀が、他の男とはどこか違う気がして……。

世の中には、こんな人もいるんだと、勝手に希望を感じていた。



「だからしばらくここにいろよ。
 他の男なんか探すな」

「な……」



あたしの返事なんてお構いなし。

そう言って、智紀は深く口づけてきた。