ノラ猫

 
「では、誓いのキスを……」


向き合った智紀が、そっとあたしのベールをあげる。

少しだけ緊張した面持ちで、さすがに智紀も緊張とかするんだなと思うと、こっちの力が抜けた。


「何笑ってんだよ……」
「ううん…」


つい顔に出てしまったのか、智紀が不思議そうにあたしを見つめる。

こんなアドリブが出てしまうのは
きっと参列者が誰もいないから……。


そっと智紀の手が肩に触れて
サファイア色の瞳があたしを見つめる。


優しくて
綺麗で

大好きな瞳。


そして……



「……」



温かい唇が
あたしの唇にそっと重なった。
 


好き……
大好き。


この日、あたしは世界で一番幸せな花嫁となった。