「どうし……」
「ごめんっ……ごめんなっ……」


思い出した瞬間、罪悪感に見舞われて
ただただ謝ることしか出来なかった。


腕の中にいる凛は、今の俺の行動の意味が分からず、きょとんとしている。


伝えたい。
今あるこの気持ち。


過去も今も……
どうしようもないほど凛を愛していることを……。


「籍入れる予定日……過ぎちゃったな……」

「え……?」


不器用で、照れ屋な俺がようやく言えた一言。

本来なら、先週一緒に籍を入れる約束だった。

凛と初めて会ってから
1年経ったあの日……。

大雨の降った忘れられない夜。


「と…もき……?もしかして……」

「思い出した。全部……。
 凛と出逢ったあの夜も、凛を守ったあの戦いの日も……
 凛を愛した特別な夜も全部……」


鈴に触れた瞬間、走馬灯のようにすべての記憶がフラッシュバックした。


忘れていたことが不思議なほど
今は凛との思い出一つ一つ、鮮明に思い出せる。


「う……そ……」
「嘘言ってどうすんだよ。
 ……凛、いい加減お前の瞳に、俺を映せ」
「っ……」


凛を追いかけたあの夜、
何も映さない彼女にかけた、最大の言葉。


凛は俺に抱きしめられたまま、肩を小さく震わせていく。

そして……



「ぅっ……わーーーっ!!」



凛は子供のように、大声を上げて泣いた。


あの、神楽坂との戦いに勝ったあの日のように……。