ノラ猫

 
「はぁっ…はぁっ……」


お互いに息が切れて、足もその場で止まる。

いつの間にか男が追いかけてくることはなくて、住宅街の片隅に俺たち二人だけ。


流れるのは、重たい沈黙。
凛は黙って、掴まれていた腕を握っている。


俺はいったい、どうして凛を連れて来たんだ?
連れてきて、「戻ってこい」なんて言うつもりだったのか?

考えなんて定まらずに
勝手に体は動いていて……


「アンタっ……いったいなんなの!?」


そう言って睨む凛。


なんで……。

なんでこんなに、コイツの瞳に光がねぇの……?


病院に来ていた凛は
優しく俺を気にかけたり、忘れた俺に悲しんだり、
あんなにも温かい瞳をしていた。


だけど目の前の凛は
全世界が、敵と思っているような孤独な瞳。



「お前……あの男と、どうするつもりだったんだよ……」



うすうす感づいてしまっている答えを求めて
冷たい瞳の凛に問いかけた。