(お前は俺の人形なんだよ)
何度その言葉を言われたんだろう……。
そのたびに自分も、心を必死に捨てた。
傷つくのが嫌で、痛い思いをしたくなくて……。
「悪い。触れてほしくない言葉だった?」
「べつに……平気」
黙ってしまったあたしに、智紀が申し訳なさそうに謝ってきた。
べつに平気。
もうあたしは、自由の身なんだから……。
「28」
「え?」
「年」
「あ……そう」
続けられた回答に、一瞬何のことなのか分からなかった。
28歳。
それでも、予想よりずっと上だった。
つまりあたしと10歳違うことになる。
「おじさんだった?」
「そういうわけじゃ……。けど若いね」
「よく言われる」
そう言って微笑む智紀は、やっぱり20代前半にしか見えなかった。

