「俺……」


しばらく沈黙が続いて、重たい口を開いた。

今、俺が心に思うこと。
どうしようもない穴が開いた心……。


「お前のこと、覚えてるんだよ」

「……は?」

「お前のことだけじゃない。
 自分がどんな経歴を出て、パパラッチをしてたことも、カメラマンをしていることも……。
 自分に関わった人物、友人、付き合ってた彼女……。

 だけどどうやっても、凛という女の子だけが思い出せねぇんだよ!!」

「智紀……」


なんで?
なんで彼女だけ思い出せねぇの?

付き合ってたのに……。
結婚まで考えたほど、深く愛していたはずなのに……。


どんなに思い出そうとしても
彼女との出会いも、どんなふうに過ごしたかも覚えていない。


「俺だって……思い出してやりてぇよっ……」


好きで忘れたんじゃない。


思い出せるものなら
思い出してやりたいんだ。