「37.2」
「まだ微熱があるな」
「寝てれば治るよ」
「じゃあ、寝てろ」
「でももう眠くない」
「子供かよ」
そんなこと言われても、一日中ベッドの上で過ごせば、いい加減眠気なんてやってこない。
お昼くらいまでは、高熱ってこともあったから、けだるさでずっと寝ていたかったけど……。
「仕方ねぇな。少しだけだぞ」
「え?」
「話し相手になってやるよ。こっち来れば」
「うん」
許可がおりて、ベッドから降りた。
智紀のあとについて、部屋から出ると、トイレの手前にはもう一つ部屋があって……。
「座ってて。あと、これ羽織ってて」
「……うん」
リビングと呼ばれる部屋が、そこにあった。
「智紀って金持ちなの?」
「なんで?」
「だって一人暮らしにしては立派」
「まーな。普通よりは出世してんじゃね」
「ふーん」
人の感覚なんて分からない。
あたし自身も、普通の家とは違う暮らしをしていたから。
だけどこの部屋の相場が、普通の男の人の一人暮らしにしては高値だということくらいは分かった。
「金銭目的になった?」
「べつに興味ない」
「あ、そ」
智紀が金持ちだろうとそうだろうと関係ない。
だっておそらくあたしは、明日にはこの部屋を出るだろうから……。

