ノラ猫

 




「ただいま」


時間が9時を回ったところだった。

外は完全に真っ暗で、一人ぼーっとベッドに座っていると、智紀が帰ってきたようだ。


「おかえり」
「調子はどう?」
「だいぶいい」
「どれ」
「っ……」


触れられて、かなりビックリした。

おでこに触れてきたその手が、予想以上に冷たい。

思わず目を見開いて、ビクッと震わせたあたしに、智紀はくすっと笑いだす。


「悪い悪い。そんなに驚かれるとは思わなかった」
「手、つめたすぎ」
「あ、そっち?」
「そっちって何が?」
「あー……いや、べつになんでもない」


あたしの反応を見て、つまらなそうな表情。

いったい、何を期待していたのか……。


「でも確かに、熱もだいぶ下がってそうだな。
 計ってみ」
「うん」


渡された体温計を脇に挟んで、電子音が鳴るのを待った。

ピピッと鳴って覗き込んだ画面には、37.2°と記されている。