ノラ猫

 
「凛っ?」


ヒステリックのように叫んだあたしに、驚いた声。

予想していた人の別の声だと気づき、恐る恐る顔を上げた。


「と…もき……」
「どうした?何そんな怯えて……。
 仕事、今日は一本だけで終わらせてもらったんだ」
「ぅっ……」


駆け寄ってきた智紀に、そのまま抱き着いた。


怖くて
体がカタカタと震えて
早くこの人の温もりに触れたくて……。


「凛……」
「い、やだっ……怖いっ……」


いつまた、あいつらがやってくるのか、ただ怖くて、
どんなに強気で戦おうとしても、ほんの一瞬で負けてしまうほど、体はにいさんに傷つけられていた。


「何があった?」


ふわりと撫でられる頭。

震えを止めてくれる手のひら。


両手でぎゅっと智紀の服を掴んで、小さく口を開いた。



「来た、の……。おじさんの付き人、が……」

「ちっ……もう嗅ぎつけたのか」



あまりにも早い手回しに、智紀もギリッと自分の手のひらを握る。