「ほら、食えるだけでいいから食え」
「……」


待ってろ、と言われてから5分後。
彼がお盆に何かを持って部屋に戻ってきた。


そこには湯気をたたせた、真っ白なおかゆがあって……。


「レトルトのだけど。
 これ食ったら、薬も飲めよな」


その横には、聞いたことのある市販薬の錠剤が添えられていた。


「食欲ない」
「食える分だけでいいから喉に流し込めって。じゃないと薬飲めないだろ」
「……」


そうは言われても、まったく食欲がわかない。

ただ、もくもくと湯気をたたせているおかゆを見つめているだけ。


「ほんと手のかかるガキだな。
 貸せ」

「あ」

「……………ほら」

「え?」


お皿を受け取り、一口分のおかゆを蓮華へとすくうと、彼は息をふきかけ冷ましてくれた。
そしてそれをあたしの口元までもっていく。


「早く口開けろよ」
「……」


言われるがままに口を開けると、むりやり放り込まれたおかゆ。


「……あつい」
「悪い」


口の中に広がったおかゆは、ちょっとだけ熱くて……
だけど……


「おいしい」


レトルトとは思わせない、温かみのあるおいしさを感じられた。