「迷惑って思うくらいなら、最初からここに連れてこねぇよ。
 とりあえず、熱が下がるまで寝てろ」

「……」


予想外の言葉に、正直言葉を失ってた。

今のあたしは、熱を出している迷惑な存在。
それを見ず知らずの彼は、自分のベッドを差し出して、看病までしてくれている。


「何が…したいの?」
「は?」


あたしなんかを助けたところで、何も返ってこない。
持っているお金だってたかがしれてる。

自分にあるのは、この身ひとつ。


「あたし、この体でしか返せないけど」


お礼の仕方なんて分かんない。
見返りなんか渡せない。

だから差し出せるとしたら、もう汚れてしまっているこの体。



「バカか。
 ガキになんか興味ねぇよ」

「っ……」



そう言って、彼は人の鼻をつまんだだけだった。



彼の笑った顔が、どことなく切ない。
人の顔を見て、困ったような瞳を向けている。


この人はいったい、何を考えてんだろう……。