ノラ猫

 



それから次の日には退院できて、
言われた通り、必要最低限の食生活と睡眠時間はとった。

変わらず仕事だけは減らして、凛を見つける手がかりを探す。


だけど俺が知っている情報は
神楽坂凛という名前だけ。

義兄の名前すらも知らない。


ひたすら「神楽坂」という名字を頼りに、一軒一軒まわるしかなかった。



時間ばかりが経って
焦りと不安が募っていく。


凛からの電話ももうない。
かかってきていたあの電話番号も、非通知に設定されていたのでかけ直しようがない。


さらに一週間という月日で
凛がどれほど深い傷を負わされているのか、そればかりが気になった。



《すみませんが、こちらに凛という人はおりませんが……》


今日も何軒目かも分からない「神楽坂」の家を訪ねていた。

時間的に、最後となるであろうこの家は、無駄にでかい屋敷みたいな家。
インターフォンに出たのは女の人で、返ってきた答えはもう聞きなれた返答だった。


「そうですか……。すみません」


一言謝って、その家から離れた。



時間ももう9時。
これ以上遅くの訪問は、相手に失礼となる。

また明日出直すか……。

重たくなった足を引きずって、今日のところは家へ帰ろうとした。