ノラ猫

 
は?
どういうことだよ……。

もう大丈夫って……。


「んな震えた声で、大丈夫なわけねぇだろ!!」


留守電だと分かっても、電話に向かって怒鳴った。


凛はいつだって、無表情で、感情を露わにしなかった。
声色だって変えない。
嬉しい時を読み取るのも、じっと顔を見てないとなかなか伝わらない。


だけど唯一、あからさまに変わるのは
そこに義兄が関係しているとき。


その時だけは、お化けに怯える子供のような
感情を露わにして震えるんだ。


今聞こえたその声は、まさにそれ。


大丈夫だって言ったのも
きっとそこに、義兄がいたから……。



「くっそっ……」
「あ、おいっ……智紀!どこ行くんだよ」
「凛を探しに行く」
「探しに行くってお前っ……。
 まだ退院許可降りてねぇんだろ?」
「んな、のうのうと寝てられっかよっ」
「お前いい加減にしろよなっ!!」

「すみません。他の方のご迷惑になるので、もう少し声のボリュームを落としてください」


ロビーで言い合いになる俺と雄介。

だけどそれを、看護師に止められ、躍起になっていた感情が少しだけ冷静になった。