ノラ猫

 
それから丸一日寝ていたらしい。

目が覚めたときには腕に点滴がついていて、雄介が見舞いに来てくれていた。


「お前、最近どうしたんだよ。そんな倒れるまで追いつめて……」


今まで病院に運ばれたことのない俺を、雄介は心から心配してくれていた。

誰にも話したことはなかった。
だけどこいつにだけは話しておいてもいいと思い、口を開く。


「凛が……さらわれた」
「りん?って、猫の?」
「違う。女の子だ」
「は?」


今まで、雄介には「凛」というのは拾ってきたノラ猫と話していた。

だから当然、女の子と聞いて目を丸くさせている。


「……携帯は?」
「あ?多分、鞄に入ってんじゃね?」


言われて、すぐに鞄から携帯を取り出した。

電源のついたままの携帯は、着信と留守電があったことを記している。


「おいっ、どこ行くんだよ?」


慌てて携帯を握り締めると、すぐに病室から出て、携帯を使用していい場所を探した。

かかってきた電話は、見知らぬ番号。
だけどそれが、凛を探す何かの手がかりの番号だと、すぐに察した。


留守電に接続して、どうでもいい機械音が流れる。
そしてそれが途絶え、次に聞こえてきたのは……



《智紀……。あたし、家に帰ったよ。
 もう大丈夫だから……。


 今までありがとね。バイバイ》



今一番聞きたい彼女の声だった。