「伊川さん、彼女でしょ?行ってください。俺も用事あるんで」
「あ、スマン…」
苦笑いでそう言うと、一目散に部室を飛び出した。
その姿に部員は目が点。
「…よく分かったな」
経介は伊川さんの焦りっぷりに驚いている。
そりゃ…雪が積もってる中に、彼女が外で彼氏が部室なんて嫌だろ。
「みりゃ、分かるよ。時計チラチラ見過ぎだし…いつもより言葉濁してるし」
「へー、俺は分かんなかったな」
「あ、俺も帰るよ」
俺はマフラーをしっかりと首に巻く。
「おー、汰架矢もか…。じゃあまた明日な!」
「おう」
俺は手を振って、部室を後にした。
ゆっくりと歩いているつもりなのに…。
いつもよりか歩くスピードが早い。

