それを彼に渡す。

「橘…ふゆか」

あ、間違えなかった。

たまに、「とうか」って言われちゃうんだよね。

躊躇なく言ってのけた彼に、何故だか心で拍手を贈る。

「…冬架には冬が似合ってるね♬」

彼はそう言って、微笑んでみせた。

「…うん。ありがとう」

少し恥ずかしい。

「ランニング頑張ってね」

あたしは知らぬ間に口にしていた。

「おう!毎日ココ来るから、窓で待ってて」

ニッと笑う。

「うん」

あたしは笑顔で頷いていた。

彼はあたしの返事を聞いたらすぐに走り出した。

「ゆ、雪にハマらないでね!」

口に両手を添えて、走りゆく後ろ姿に叫ぶ。

すると、手をヒラヒラと振って…走り去って行った。

…彼の名前は、鈴森汰架矢。

これが…あたしの大切な恋する人の名前。