この空の下で


優のマンションの前まで来ると、
ものすごい動悸に襲われた。

大丈夫。

そう何度も自分に言い聞かせ、
逃げ出しそうな自分と戦いながら、
部屋の前まで行った。

高城さんがいたらどうしよう。

そう思うとインターホンを、
押す事を迷った。

いても、わかってもらえるよね?

あたしは、優に会いに来たわけではない。

元カノだと知ってるわけだし、
パソコンと荷物を取りに来たと言えば、
わかってもらえるはず。

自分が、
過去の女だと言い聞かせている事に、
ものすごく虚しくなった。


虚しくなったあたしは、
意外にも簡単にインターホンを押した。

はい。

そう言う優の声に少し安心し、

「凛ですけど、
荷物取りに来ました。
明日会社で必要なものがあって。
今、大丈夫ですか?」


ガチャガチャ



あたしが話し終わるのを待つ事なく、
玄関が開いた。

高城さんだったらどうしよう。
罵声を浴びさせられ、
拳が飛んできたらどうしよう。

そう思いながら、ドアの方に目を向けた。