「コノ糞野郎!」
その威勢の良さに、静は感心したように目を細めた。
静が少し力を加えれば首が取れるというのに、それを知ってか知らずか相も変わらず小鬼の癖に態度は大鬼のよう。
相手の力量すら満足に測れず、妖か否かの判別すら出来ない。
そして、自らの死期すら。
「……グギャッ」
……悟ることも、出来ないのだ。
何と哀れな。
眉一つ変えることなく亡骸を床に放ると、静は呆然としている小鬼達に訊ねた。
「此処に私以外の妖が来たはずだ。狙いは坊主か?」
静の問いに、小鬼は先程とは一変。
漸く目の前の男が妖であり、且つその力が無比のものであると気付いたのだろう。
震えながら素直に答えた。
「ソウ、ダ……」
「奴ハ食イ荒ラシタ。目ガ、赤イ」
「怨ミノ赤ダ」
「怖イ妖……」
口々に呟く小鬼達に、静は目を伏せた。
……やはり……か。
この寺だけではない。
至る所の寺や神社が同じ惨状のはず。
そして風が運ぶ濃い血の臭い――……腸を食い尽くされた坊主達。
狙いが坊主、そして神主や巫女ならば、恐らく――。
「……寧々……」
無垢な笑顔が脳裏に過ぎり、静は踵を返した。
「オ前、子供連レテイルダロ。オマケニ娘ダ」
不意に。
背後から掛けられた言葉に、静は徐に足を止めた。
「……だとしたら何だ」
にまり、小鬼が大きな口を歪める。
「精々気ヲ付ケロ」
善意など欠片も籠っていない忠告。
その忠告に答えることなく、静は長い黒髪を靡かせて立ち去った。
「……一晩、寝床を借りるぞ」
