夜叉の恋



すっかり夜の帳が下りた頃。

冷たい床で身を丸めるようにして眠る寧々の小さな寝息だけが、静寂が包む室内に心地良く響く。

その隣にいるべき妖の姿は、ない。

広い室内に只一人残された小さな少女の姿が、酷く儚く見えた。








「いるのだろう。隠れずに出て来い」


一方、寧々の休む部屋から少し離れた座敷。

静が徐に声を張れば、部屋の隅でざわめく小さな気配。

やがて蠢いていたものは徐々に輪郭をはっきりとさせ、小さな鬼の姿を象った。

それが数体。

大きな一つ目が、ぎょろりと静の姿を映した。


「ナァンダ……人間カ……」

「キキッ。アイツカト思エバ、弱イ人間ダッタヨ」

「弱イ弱イ」


にやにやと薄ら嗤う小鬼達に、愚かな、と静は僅かに口角を持ち上げた。

小鬼。

その名の通り、小さな鬼だ。

姿形だけでなく力も弱く、見た様子だと恐らく頭も弱い。

まともに相手にしたのは数える程しかない妖。


「お前達は此処に棲み付いているのか?」

「キキッ、何デ人間如キニ応エル必要ガアル?」

「時間ノ無ー駄」

「ザマーミロ、糞人間」


静の問いに、心底愉しそうに応える小鬼達。

……全く、救いようもない。

どちらが糞だ、と心の奥で吐き捨てる。


「ほう、成程。お前達は私が人間だと」

「人間ダロ。何言ッテンダ」

「愚カナ糞人間!」


その様子に、鼻を鳴らす。

下等中の下等妖。

静は憐れむように小さく嗤うと、一匹の小鬼の首を指で捻り上げた。