もう少し、このままで。

「あのさ、桜子」

突然、優輝の顔が真剣な顔になり、曇りのない瞳に私が写る。

「な、なに・・・」

この雰囲気になぜか少しだけ寒気を感じた。

「・・・俺たち、距離おかね?」

・・・・・・・え?

「いま、な、んて・・・・・・?」

声が震えた。

手も震えた。

足も震えた。

すべてが身震いをした。

「だから、距離おこうって。」

「なんで?私なんかした・・・?それに、今日、記念日だよね?」

「え、あ、記念日か。ごめん、タイミング悪かったな。」

ははっといって水を飲む優輝に怒りを覚えた。

「なんで?!?ねぇ!なんで、笑ってられんの?」

「俺さ、他に好きな子ってゆーか、気になるこみつけちゃってさ。」

なんて、実に、くだらない。男はいつも、だいたいそうだ。

「気なる子見つけちゃった。」だとか「飽きた」だの。

「そ、うなんだ。おんなじ学校?」

怒りと切なさといろいろな感情がごちゃごちゃになっていて、うまく声にならない。

「うん、そう。なんか、あっちも俺に気があるみ・・「ガタン」

「もういい!!!!わかった!!!!!!優輝は最初から、私になんて気はなかったんでしょう!?」

自分でも驚いた。こんな大声をだすなんて・・・。

おかげで、店内の視線は私にすべて集まった。

店員さんも、「どうなさいました」とかけつけるがそんな声は聞こえない。

今はただ、優輝に対するごちゃごちゃな想いでいっぱいだった。

「ちょ、桜子!!おい!!!」

気づいたときにはもう、駆け出していて、いつの間にか歩道橋の上にいた。

ポツリポツリと雨が降り出した。

「・・・雨だ。私の涙雨か。神様のいじわるだね。こんなときに雨なんてさ」とつぶやいた。

ザぁぁぁアアーーー

とことん、雨に打たれたかった。

このもやもやを消し去ってほしかった。

新藤優輝という名の男を私の中から、消してほしかった。