『先生?どうしたの?』と言う俺に女は

『別に』

冷たい、全く感情が込もっていない、言葉を吐く。

少しの間、部屋の中で沈黙が流れた。

俺は先生を見たまま、呆然としていた。

先に、沈黙を破ったのは彼女だった。

『ねぇ、ちょっと!!あんたのお兄さん、光一君って女居るの?』

『へ?』突然の事で、俺は間抜けな返事をしてしまった。

そんな俺を、キッと睨み

『だから、居るか居ないか聞いてんの!!人の話、聞いてんの?』

『いや、先生。裏表、違い過ぎじゃない?』

『うるさいわね。こういう性格なのよ。で、どうなのよ?』

『えっと、居ないんじゃないかな。』

『ふ~ん』と女は不敵な笑みで笑っていた。

『あっ所で、あんたは?修二君は?』


名前を言い直す所が、益々、気持ち悪く感じる。

『居ないよ』

『やっぱりね』

『どういう意味?』

『そのままの意味よ。だって修二君、顔はかっこいいのに、女の扱いに慣れてない感じだし?それに・・・、童貞でしょ?』

彼女の口から発する『童貞』と言う単語は、あまりにも彼女の外見からして、不釣り合いだった。