その女は、白いブラウスから見える、胸の谷間を態々、俺に見せながら、笑顔で話掛けてきた。

『こんにちは。君が修二君ね?お母様から、君の事聞いてるわ。
これから、君の家庭教師をする、須藤綾子《スドウ アヤコ》です。よろしくね?』

笑顔で言われたが、裏があるような笑顔だと当時の俺は純粋に気が付けずに、この女を信じていた。

白いシルクのソファに座っていた5歳上の兄貴が、この女を見て言っていた。

『イイなぁ。修、こんな美人が家庭教師なんて。羨ましいわぁ。』

俺は家の中では、《修二》ではなく《修》と呼ばれている。


昔からだ・・・。

だから、違和感は無い。

兄貴、光一《コウイチ》の言葉を聞いて女は、

『やだぁ、光一君たらぁ。照れちゃうじゃない。でも、ありがとう』と頬を赤らめながら嬉しそうに笑う女。

今の俺なら、何だこの女。男に媚売って。
マジ、気持ち悪りぃ。ブリブリしてんじゃねぇよ。と、思うだろう。

まぁ、そんな女が俺の前に来て、胸や尻を淫らに振っても、俺は興奮もしなければ、気持ちも動く事もない。

その当時の俺は、この女を一瞬だけ可愛いなんて思ってしまった自分が嫌いだ。