沙知絵は、神野を見つめながら…なぜ今の言葉を吐いたのか、わからなかった。

(どうして…)

沙知絵は、神野を知らなかった。

いや、記憶になかった。


しかし、目の前で、刀を構える神野の腕を見て、

沙知絵は、自分の腕であることを理解した。

「なぜ…」

沙知絵の頭に、疑問が浮かんだ。


が、しかし……

それを考えている時間は、なかった。

神野を囲む進化した者達が、一斉にレーザー光線を発射したのだ。



「真也!」

なぜ…その言葉が出たのかわからない。なぜ…その名前を知ってるのか…わからなかった。

そして、なぜ…こんな行動をとったのかも…理解できなかった。


しかし、なぜか…心の底では、理解していた。



「沙知絵!」

神野の前に飛び出した沙知絵は、盾となり…レーザー光線から、神野を守った。

無意識に、体を硬化させたが、沙知絵の全員は穴だらけになっていた。

神野は、崩れ落ちる沙知絵の体を抱き止めた。


「どうして…だろ……。あなたに…生きてほしいとお…もった…」

沙知絵は微笑みながら、神野の腕の中で、こと切れていく。

だけど…なぜか心の奥は満たされていた。


(あたしは…ずっと…満たされていなかった…なのに、今は……)

沙知絵は、最後の力を使い、腕を伸ばし…神野の右腕に触れる。

(今なら…わかる…。あたしが、腕をなくした理由が…)

沙知絵は、神野に笑いかけた。

そして……。


「生きて…」

それが、沙知絵の最後の言葉となった。