11時36分。

戦い続ける神野は、絶望を感じていた。

数が多過ぎる。

次元刀は、どれだけ切っても…刃こぼれはしない。切れ味はまったく、変わらない。

だけど、神野の体がついていかない。

移植された右腕の付け根から、浸食されている部分が、痛みだした。

いずれ…神野の体は、右腕に毒され…人間ではなくなる。いや…なくなるか…その前に、拒絶反応が起きて、亡くなるのか……。


だが、そんな心配より、神野はここで死にそうだ。

何とか、発電所の前まで来た神野。体を隠す林がなくなり、神野は次元刀と、飛び道具とのリーチの差が…ついに、致命的になった。


転がる進化した者達の死体に囲まれて、神野は片膝をついて、次元刀だけを前に向けていた。

その死体の向こうに、距離をとって囲む…進化した者達は、右手を神野に向けていた。

もう避けれなかった。


(ここまでか…)

神野は口惜しさに、絶望よりも…己に怒りを感じていた。

(まだ…死ねない…)

神野は、何とか…生き残る道を探した。




「どうして…ここにいるの?」

唐突に、懐かしい声が、神野の耳に飛び込んできた。

神野はその声に、戦いの場でありながら、一瞬それを忘れた。

神野の視線が、一点に釘付けになった。

見知らぬ敵達の中に、神野は知った顔を見つけた。

その顔こそ…神野が追い続けた人物だった。

「沙知絵…」

神野の意識はもう…沙知絵しか見ていなかった。

神野の持つ次元刀が、小刻みに震えていた。