天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

11時34分。

「何?虫が、入り込んだと!」

発電所近くでの…神野と警備隊との接触は、すぐに山根に伝えられた。


「来たようね…」

山根は突然、死角から声がして、驚いた。

はっとして、振り返った山根の目に、壁にもたれる綾子の姿が映った。

「女神……!?」

山根は慌てて、椅子から立ち上がると、

綾子の前に跪いた。

「このような場所に…なぜ?」

山根には、綾子がここにいるのは、予想外だった。

「あたしは…お飾りの人形ではない」

綾子は笑うと、跪く山根の頭の上に、赤いヒールを履いた右足をのせた。

「あたしに無断で…何かやってるみたいだけど…。お前は、あたしの駒に過ぎないのよ」

「わかっております…女神よ」

山根は、体を恐怖で震わせた。

「ここを暴走させるのは、いいわ。だけど,ここにいる多くの…あたしの駒達をどうする気なの?爆発に、巻き込む気なの?」

綾子はぐいぐいと、ヒールの先を山根の頭に、押しつける。

「し、心配いりません…。我々の中で…優れた者は、テレポートを使えます。テレポートも使えない…弱き者だけが、淘汰され…死ぬことになります」


「無能はいらないと?」

綾子の問いに、山根は頷き、

「はっ!我々進化した者は、すべての生物の頂点に立たなければいけません。弱き者はいりません」

山根のこたえに、綾子はフンと鼻を鳴らすと…足を頭から降ろした。

「好きにすればいい」

綾子は、山根を見下ろしながら、歩きだした。



「女神!どこへ…行かれますか?」

山根は、顔を上げた。 


綾子は振り返らず、

「招待した…知り合いを迎えに。そして…」

ドアの前で止まると、

「…フッ…」

綾子は口元に笑みをたたえながら、ドアの前でテレポートした。