「部長…」

緑は深く…すぐに美奈子の姿を飲み込んだ。

明菜は心配そうに、美奈子が走っていると思われる茂みを、目で追った。


「無茶だ…」

本当はすぐに、美奈子の後を追いたかったが…

神野は諦めた。

まず…今の美奈子の行動…身体能力が、普通の人を超えていたこと……それに…。

「沢村さん…。できるだけ、俺の後ろにいてくれ」

神野がそう言うと、彼の右腕が盛り上がった。 

「もう近くにいる!」

神野は、明菜から次元刀を抜き取ると、前に向かって、衝撃派を放った。

と同時に、光が…神野と明菜の間を通り過ぎた。

「!?」

何が起こったか…理解できない明菜。

「チッ」

神野は舌打ちすると、前を向き、明菜に叫んだ。

「ここから、動かないで!」

神野は、次元刀を握り締めたまま…目の前の林に飛び込んだ。


「神野さん!」

明菜から離れると、次元刀が消えるという欠点は、

明菜の自覚とともになくなった。

神野は、袈裟切りの構えで木々を切り裂いていく。

ほとんどの人の手の入っていない林に、血とレーザー光線が、狂乱のダンスを踊り始めた。



明菜は動けなくなった。戦うすべがない…自分は、ここでは何もできないことに、気付いた。


(だけど!)

明菜は胸を握り締めると、目を凝らし…光の軌道を追った。

(隙間があるはず…)

明菜はじっと…攻撃が止むのを待った。


神野は戦いながら、前に移動しているようだ。

音と光が、少しつづ遠退いていく。

それに合わせて…明菜も覚悟を決めて、前に出た。