「綾子ちゃん…!?」

いきなり、かかってきた相手を知り…驚き戸惑ってしまう明菜に、美奈子は叫んだ。

「明菜!深呼吸しろ」

美奈子の舞台現場のような指示に、明菜ははっとして、すぐに一度…不器用な深呼吸をした。

「落ち着いて、出ろ!」

明菜は頷くと、電話に出た。


(綾子…)

美奈子には、聞き覚えがあった。

神野は目をつぶり…心を落ち着けている。


「はい…」

明菜は返事をした後、ただはいはいと頷き…

最後に…明菜は目を細めた。

「わかったわ…」



そして、携帯を切った。


「明菜…」

完全に切れたことを確認すると、美奈子は明菜に詰め寄った。

明菜は一度、息を吐いた後、美奈子を見た。


「大した話じゃ…なかったです…」

明菜は、内容を説明する前に、美奈子に言わなければいけないことがあったことを、思い出した。


「部長…。あたし…数日前に、幼なじみにあったんです。近所の年下の…女の子」

ここで、明菜は一度言葉を切ると、今かかってきた携帯に目を落とし、

「その女の子は…あたしの一番仲が良かった幼なじみの…妹…」

ぎゅっと携帯を握り締め、

「……………赤星浩一の妹です」




「赤星浩一…」

美奈子は、名前を反復した。

「赤星浩一………」

神野は、ゆっくりと目を開けた。


「はい」

明菜は頷いた。


美奈子は少し、考え込んだ後…明菜の携帯に目をやり、

「さっきの電話の内容は?」

ときいた。


「ただ………もうすぐパーティーの準備が始まるから…あたし達を招待すると……。きちんと、決まったら…また電話すると…だけです」

「パーティーか…」

美奈子は腕を組み、今の電話のタイミングを考えた。


(赤星浩一の……妹…)

それだけで……美奈子には、一連の出来事に無関係とは、思えなかった。