天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

「電話がかかってくる?」

明菜から、リンネと会った内容を聞いた美奈子は、訝しげに首を捻った。

「…ということは、向こうの誰かが…あたしの番号を知っていると…」

美奈子は、自らの黒い携帯を見つめながら、記憶を辿った。


「リンネは…あたし達の劇団に潜り込んでいたのですから…部長の番号を知ってるんじゃないんですか?」

明菜の言葉に、美奈子は首を振り、

「前の携帯は、劇団の連絡用だったから…あたしが、しばらく脱退するんだったらって…劇団専用に名義を変えて、店に置いてある」

美奈子は今の携帯を、明菜に示し、

「こいつは、最近新しくしたから…お前ら以外知らないはずだ。化け物とやり合ってるんだから、知らないやつに、迷惑はかけれないからな」


「だったら…店にかかってくるんじゃ…」

明菜の言葉を、美奈子は遮った。

「あいつが…そんな間違いを起こさないだろうな…」

美奈子の脳裏に、不敵に笑うリンネの姿がよみがえる。


「だったら…」

「やつらは、人間じゃない…。我々の考えなんて…通用しない」

神野は、美奈子の携帯を見つめながら、口を開いた。

「いつまで…携帯が鳴った場合…すぐに出よう」

神野の言葉に、明菜と美奈子は頷いた。





その時、唐突に携帯が鳴った。

明菜はびくっとした。

三人の間に、緊張が走る。

美奈子は、携帯に出ようとしたけど……

携帯が鳴っていない。

美奈子の携帯ではない。


美奈子は無言の携帯から、顔を上げ、二人を見た。

はっとして、明菜が携帯を探す。

神野は、携帯を持っていない。

デニムのポケットから、出てきた明菜の携帯は輝いていた。

慌てて、明菜はディスプレイに表示された名前を確認した。


「綾子ちゃん…」