天空のエトランゼ{Spear Of Thunder}

「キェェェー!」

甲高い奇声を発しながら現れたのは、恐竜だ。

「T…レックス…!?」

それは明らかに、よく映画とかで見るTレックス…そのものだった。

噛み合わせの悪い口から、流れる涎がこぼれ、地面を溶かす。

「Tレックスと…ちょっと違うかな…」

僕は後ろに下がりながら、Tレックスの口から、炎が吐かれていることを確認した。

「くそ!」

僕は、カードを指で挟み、魔法を使おうとした。

「どうして…こんな所に…竜が…」

僕の後ろから、声がした。

僕が振り返ると、青ざめた顔をした奈津子が立っていた。

「どうして…」

驚く僕に、奈津子は震えながら、こたえた。

「赤星くんの…忘れ物…」

奈津子の右手には、僕の着替えが入った鞄があった。

「奈津子さん…」

(わざわざ持って来なくても、よかったのに…こんな危ないところに)

と言おうとしたら、

奈津子が叫んだ。

「危ない!」

振り返った僕の目の前に、炎が迫る。

「ガード!」

僕が叫ぶと、前方にバリアが張られた。

「くっ!」

しかし、バリアはすぐに破壊された。

凄い攻撃力だ。

僕は、Tレックスもどきに注意しながら、奈津子に叫んだ。

「僕に構わず、逃げて!」