「あたしさあ〜死んだのよね…。魔王との戦いの最中に」

美女は、大きく背伸びをし、

「だ・か・ら!体が必要な訳よ」

美女は、空中から降ってきたゴブリンの死骸を踏みつけながら、歩きだす。

「魔王…とか…意味が…理解できないんですけど…」

「あんた…頭、悪い系?」

美女は、カードを指に挟みながら、

とある店の扉を開けた。


「つまり、あんたは…勇者である…あたしの依り代になった訳」

「勇者…」

僕は呟いた。

店は、小さな酒場だった。

「いらっしゃー…」

愛想笑いのウェイトレスの顔が、引きつり…トレイに乗せたビールを落とす。

周りお客からも…笑みが消え、グラスやナイフを持ったまま、凍りつく。

店の活気は…

なくなった。

「キャーッ!」

ウェイトレスの悲鳴から、店はパニックになる。

「踏み倒しのアルテミアよ!」

「ブロンドの悪魔!」

「タダ酒飲みのアルテミア!」

「死んだんじゃないのー」

「折角…魔王が、1人いなくなったと思ったのにいい〜!」

店内は、騒然となる。

そんなことなんて、お構い無しに、アルテミアが店内を歩くと、

人々やテーブルが自動的に、道を開けてくれる。


その様子を見て、僕はきいた。

「ゆ、勇者って…言いませんでしたっけ?」

「お黙り!」

僕の声を一喝すると、アルテミアはカウンターにもたれた。

「勇者とは、尊敬されるだけでなく…恐れられるものなのよ」